不幸に見えて実はありがたいもの

  この夏の初め頃に廃車していま車がない。近くの原っぱに鹿が出るような所に居住しているから不便と言えば不便だが、いいことがないわけではない。どこかへ出かけようと思えば電車の駅まで14、5分歩かねならない。郵便局に行くにも、ちょっとした買い物に行くにも歩くことになるから健康によい。こんな当り前のこととは別に、ふつう考えないことに気づいた。それは車の運転がうまくなるのではないかということだ。「スキーは夏上達する」という言葉を聞いたことがあるが、何か似ているのではなかろうか。車1台が通る幅の道を歩いていると横を通るとき速度を落とす車もあるが、結構スピードを出して走るのも少なくない。その他いろいろ、運転のとき留意するとよいと思うようなことに歩いているからこそ気づく。サーキットを走るような技術の上達ではないが、運転再開のとき以前より安心して自信をもって走れる気がする。

  渡部昇一先生は『莊子に学ぶ 明鏡止水のこころ』(モラロジー研究所発行) の中で、「マイナス体験をプラスに変える発想」のことを述べておられ、「この年になって、ありがたいなあと思うのは、若いころに学資がなかったこと・・・・・そのために、思いもよらない出会いがあった・・・・・」、また「ドイツやイギリスへ留学できたのも、まったくお金がなかったからです。当時(1955)はお金持ちでも留学できなかったわけですから。」 と言っておられる。

  車がないことも、「不幸に見えて実はありがたいもの。 一見不幸と見えた幸運」というわけです。(2016/10/10)